~木とふれあい、木に学び、木と生きる~
徳島県で木育に取り組んでいる人を紹介するコーナーです。
『富永ジョイナー有限会社』指物師 富永康介さん
受け継がれてきた阿波指物の技術
「指物師」という言葉を聞いて、どんな仕事をしている人なのかピンとくる人は少ないだろう。指物師は木を組み合わせて装飾性の高い建具などを作る職人で、その仕事はじつに細かい。『富永ジョイナー』はかつて全国2位の健具産地を誇った徳島で、明治28年に創業。住宅の洋風化や大量生産品の普及で指物のニーズが減少する中、伝統技術を現代のアートやデザインにマッチさせ、阿波指物をブランドとして確立した。
5代目である富永康介さんは、高知県の高校に進学した後に京都の大学や東京での社会人経験を経て、「やはり木に携わる仕事がしたい」と徳島へUターンして指物師になる道を選んだ。
木に触れてもらうことからの木育
「コンクリートとプラスチック、木の巣箱でそれぞれマウスを飼育したら、木の巣箱のほうが出生率も寿命も延びることがわかっています」と富永さん。自身が木を扱う仕事をしていても、木の持つ力に驚かされることはたくさんあると話す。木工について学べるワークショップでは、指導にあたる社員全員が国家資格である一級技能士を取得する姿勢からも、木育にかける会社の本気度をうかがえる。
また一方で、木はどうやって育ち、そこにはどんな可能性があるのかという、より広い知識を伝えるために、木材の生産から加工、利用を担う県内の木材業界企業6社で『Wood Action Tokushima』を結成し、子どもから大人までを対象に多彩な木育プログラムを提供している。さらに大工や藍師、アートディレクターらと協力して立ち上げたプロジェクト『屋雲万次郎』では、木工をはじめとする徳島の魅力を世界に向けて発信するなど、その活動は精力的だ。
「木がなぜ優れているのかは、子どもたちがおいおい知ってくれればいい。その前段階としてまずは自然と木に触れてもらう機会を作ることが、将来的な木のユーザーを育てることにつながると思っています」。
小学校に招かれて行う木育では、小さな苗木に触れてもらうことから始まり、川上(素材生産)から川中(加工)、川下(利用)までを体系的に説明。最後に子どもたちに自分の手で箸を削ってもらうワークショップには、体を動かすことでより強く記憶に残すという狙いがある。
会社の垣根を乗り越え、早くから木育に着目して活動を続けてきた『Wood Action Tokushima』は2018年にウッドデザイン賞を受賞。
『屋雲万次郎』では木育を通しての国際交流も視野に入れており、台湾や海外でのワークショップも実施している。
DATA
富永ジョイナー有限会社
屋雲万次郎
tel.088-652-6323
徳島県板野郡北島町鯛浜字原140-6
休/日曜
HPは「富永ジョイナー徳島」「屋雲万次郎」でそれぞれ検索
Comments