~木とふれあい、木に学び、木と生きる~
徳島県で木育に取り組んでいる人を紹介するコーナーです。
『安崎木工所』代表 安崎龍也さん
熟練の技が生み出す曲線美
2年ほど前、『安崎木工所』に徳島県からある依頼が届いた。県内にある「木育ひろばのボールプールに使う木球を県産スギで作れないか?」というものだった。
スギは柔らかく表面が荒れやすいため、丸くなめらかに仕上げるのは難しく、他の企業では「加工はできない」と断られていたほど。それでも代表の安崎さんが快諾したのは、丸物木地師として積み重ねてきた45年の技術と経験への自負があったからだ。
仏壇で使用する柱などのパーツ、壺や瓢箪(ひょうたん)の工芸品など、同所が手がける木の丸物製品は多岐に渡る。現在は椅子の脚や階段の手すりなどの受注生産がメイン。小指の爪ほどの小さなつまみ、直径40センチもの木の壺、また阿波おどりのよしこのリズムの要である太鼓のバチまで大きさ、太さ、使用する木材まで持ち込まれる案件は実に多種多様。図面を見ながら作るだけでなく、「この世にないものをゼロから作ることも、よくあるんです」と言うように、依頼主の言葉にならないイメージを形にすることもあるそうだ。毎回違う木材、違う形の丸物に取り組むことで、職人としての知見や技術が自ずと磨かれてきたのだと笑う。
手に寄り添う、やさしい木の丸物
丸物づくりに欠かせないのは木材を回転させながら固定した刃で削っていく木工旋盤。先代である父から使い続けている旋盤機械のそばには、刃先の角度や長さが少しずつ違った何百本もの刃がずらりと並ぶ。製品によって刃を使い分けているため「注文に合わせた刃をそろえていくとこれくらいになる」のだとか。機械を駆使した上で最後は職人の手で仕上げる。微妙なデザインのニュアンス、パーツとして求められる精度などを微調整するからこそ、手に寄り添うようなフィット感が生まれるのだという。
オンリーワンの技術で磨き上げたスギの木球は赤ちゃんが触れても安心できるなめらかでやさしい触り心地。やさしい香りとともに、子どもたちの肌を通じて木のぬくもりを伝えてくれている。
専門の木工所が全国的に少なくなっている今、自分たちにしか作れない丸物を追求したいと安崎さんは笑顔を見せてくれた。
父の跡を継ぎ、3年ほど前から代表を務める安崎龍也さん。現役の職である父と母、妻とともにあうんの呼吸で製品を作る。
スギの木球。いつまでも触っていたくなるほどなめらか。「徳島スギの魅力を伝えていけたら」。
DATA
安崎木工所
tel.088-698-6086
板野郡北島町中村字竹ノ下3-4
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